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2006年3月 金融情報の宝庫 香港

俺は今、香港にいる。
情報収集が目的だが、とくに著名人との意見交換に来たわけではない。それどころか、今回は身分を伏せてやってきた。
オレが世界を回るとき、その半分以上は別名で行く。
現地に溶け込める格好をして行くと言った方が適切だ。
現地の生の情報を仕入れ、その国民の現実を肌で感じるにはそこまでする必要がある。

そして俺が常に頭に入れておくことが3つある。
一つは、タクシーの運転手と仲良くなることだ。やはりどこの国に行っても、やつらが一番景気に敏感だ。ハイヤーなんか使うのはカネの無駄どころか、情報収集という点では損でさえあると俺は考えている。
二つ目は、マーケットに行くこと。その雰囲気でローカルな景気が一番良くわかる。そこで野菜や肉・魚を売っている親父たちの顔で、その国の将来性もある程度はわかるものだ。
そして三つ目は売春婦に話を聞くこと。なにげに重要な情報を持っていたりする。ゴルゴ13も仕事の前には必ず女を買っているが、別にそれを意識しているわけではない。

ちなみに香港で週末に街を歩くと目に付くのが、地下鉄やショッピングモールを結ぶコリドーに集まって地べたに座り込んで話している女性たちだ。数が半端ではない。ほとんどが東南アジアから出稼ぎに来ているらしいが、この数に目を配っておくのも、景気判断にはいいかもしれない。

それはいいとして、ここ香港で話題の中心はやはりBRICS諸国の勢いの良さだ。歴史の鈍感な日本では見落とされがちだが、BRICSの中でもインドと中国は「新興」ではない。200年前、世界のGNPの半分近くはインドと中国によるものだった。つまり、ここ最近の両国の経済成長は、いわばリ・オリエントとみなされている。再び世界経済の覇権が、アジアに戻りつつあるという歴史認識だ。

この視点は、BRICS諸国に投資する際にはよく頭に入れておいたほうがいいだろう。

ちなみに俺はどちらかというとインドより中国の将来性を買っている。
「食文化」が優れているからだ。

だから俺は中華圏に来ると、とにかく食いまくる。
昨晩も、薄汚い格好で屋台街に繰り出した。
美味い中華は東京でいくらでも食えるが、この屋台の味は東京にはない。
「うまい、うまい」と食っていたら、店の親父がどんどん料理を薦めてきた。
俺が実は金を持っているということを敏感に感じ取ったらしい。
それが現場で生きている人間の強さだ。
上流のやつらを騙すのは簡単だが、現場の人間は騙せない。
これも覚えていたほうがいいだろう。
何をするにしてもだ。
★鮫島丈一郎★
愛称“ジョー”。世界で5本の指にはいる国際コングロマリットSGFグループを率いる若きスーパー・ビジネスマン。世界中の政財界のみならず裏社会にも幅広い人脈を持つ。酒はワイルド・ターキーしか飲まない32歳・独身。愛車はランボルギーニ・ディアブロとロールスロイス。
*これはフィクションなので登場する人物、団体などは「基本的に」架空のものです。
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